マカゼタマハの世界
わたくし真風玉葉(マカゼタマハ)のオリジナル小説を掲載していきます。 左のカテゴリより作品を選んでお読みください。
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世界のしくみ(1)
カナコは夕飯の後、いつもの習慣でテレビを見ていた。
別に見たい番組があるわけでもないし、特に面白いと思ってるわけでもなかったが、なぜかテレビを見なくてはいけないという気持ちになって、つい見てしまうのだった。
リビングに備え付けられた大型のスクリーンには、バラエティ番組が映し出されていた。お笑い芸人たちが、面白いのか面白くないのか分からない芸を見せている。
いや、面白いのだろう。二人掛けのソファのカナコの横ではカナコのママが大口を開けて大笑いをしていた。斜め前のひとり掛けのソファに座るパパも、大口こそ開けていなかったが、クスクスとこらえるような笑いをしている。
親子三人そろってリビングでの団らん風景だ。
ひと昔前ならば、まだママは夕飯の後片付けに追われていて、まだこの団らんの中に加われなかっただろうが、今は違う。
食料が配給制度になり、三度三度の食事が全て自動で各家庭に配られるようになってからというもの、食事の準備や後片付けは必要なくなったのだ。専用の食器がトレイに並べられ、各家庭に配られることで、主婦の負担はずいぶんと減った。食べ終わった食器は、専用のBOXに入れておけば自動的に回収してくれる。
この食糧配給制度は、献立のメニュー決定から調理、各家庭への流通までをすべてコンピューターが一括管理することで、全てを無駄なく処理していた。
いまや食料だけでなく、あらゆる場所でこのコンピューターによる管理が行き届くようになり、人間の負担はほとんど無いに等しかった。
実際、働かなくても良かった。労働は自由となり、働きたい人が、やりたいことだけをすればよかった。
「カナコ。宿題すんだの? 早くやってしまいなさい」
ただし、労働の束縛からは解放されても、教育からは解放されていなかった。子供は今も昔も学校に縛り付けられていたのだった。
「ふぁい」
カナコは気の抜けた返事をした。
ママにリビングを追い出され、自室に戻ったカナコは携帯端末の画面を開いた。テレビはリビングだけでなく、ここでも見られるのだ。ママは宿題をしなさいとは言ったが、テレビを見てはいけないとは言っていないのだ。
多機能かつ高機能の携帯端末は、いまや全国民が所有する生活必需品となっていた。
バラエティ番組はすでに終了しており、今はニュースを流していた。
各地で行われた祭事や行事ごと、スポーツの結果、経済の難しい話し、遠い外国でのできごと……。それらはカナコにとってすべて他人事のように見えた。自分とは関係のない世界の出来事のようで、全然リアリティが無かった。
そしていつもカナコは不思議に思うのだが、犯罪事件のニュースというものがほとんど流れなくなっていた。本当に事件の類は起きていないのだろうか? いつも不思議なのだ。ひょっとしたら、犯罪事件はニュースで流さないようにと、誰かがストップでもかけているのだろうか?
カナコはベッドに入り、芸能ニュースのチャンネルに替えた。
そこでは、どの芸能人が熱愛発覚しただの、離婚しただのといったインパクトのあるニュースが大きく報じられていた。他には誰がどんな活動を開始しただとか、どんな新人がデビューしただとか、どのお笑い芸人が新ネタを披露しただとか……。
やはりそれら芸能ニュースも、カナコにとってどこか別世界の出来事のように感じられていた。世間一般のニュースに比べればまだ興味がわかないこともないが、自分の手の届かない存在に感じられて、本当にニュースで言っているようなことが起きているのだろうか? と不思議に感じられているのだった。
でも、いくら自分から遠い存在であっても、無限とも思えるニュースの数々はカナコをひきつけてやまなかった。深夜になってもカナコはずっと芸能ニュースを見続け、いつしか眠りに落ちていった。
別に見たい番組があるわけでもないし、特に面白いと思ってるわけでもなかったが、なぜかテレビを見なくてはいけないという気持ちになって、つい見てしまうのだった。
リビングに備え付けられた大型のスクリーンには、バラエティ番組が映し出されていた。お笑い芸人たちが、面白いのか面白くないのか分からない芸を見せている。
いや、面白いのだろう。二人掛けのソファのカナコの横ではカナコのママが大口を開けて大笑いをしていた。斜め前のひとり掛けのソファに座るパパも、大口こそ開けていなかったが、クスクスとこらえるような笑いをしている。
親子三人そろってリビングでの団らん風景だ。
ひと昔前ならば、まだママは夕飯の後片付けに追われていて、まだこの団らんの中に加われなかっただろうが、今は違う。
食料が配給制度になり、三度三度の食事が全て自動で各家庭に配られるようになってからというもの、食事の準備や後片付けは必要なくなったのだ。専用の食器がトレイに並べられ、各家庭に配られることで、主婦の負担はずいぶんと減った。食べ終わった食器は、専用のBOXに入れておけば自動的に回収してくれる。
この食糧配給制度は、献立のメニュー決定から調理、各家庭への流通までをすべてコンピューターが一括管理することで、全てを無駄なく処理していた。
いまや食料だけでなく、あらゆる場所でこのコンピューターによる管理が行き届くようになり、人間の負担はほとんど無いに等しかった。
実際、働かなくても良かった。労働は自由となり、働きたい人が、やりたいことだけをすればよかった。
「カナコ。宿題すんだの? 早くやってしまいなさい」
ただし、労働の束縛からは解放されても、教育からは解放されていなかった。子供は今も昔も学校に縛り付けられていたのだった。
「ふぁい」
カナコは気の抜けた返事をした。
ママにリビングを追い出され、自室に戻ったカナコは携帯端末の画面を開いた。テレビはリビングだけでなく、ここでも見られるのだ。ママは宿題をしなさいとは言ったが、テレビを見てはいけないとは言っていないのだ。
多機能かつ高機能の携帯端末は、いまや全国民が所有する生活必需品となっていた。
バラエティ番組はすでに終了しており、今はニュースを流していた。
各地で行われた祭事や行事ごと、スポーツの結果、経済の難しい話し、遠い外国でのできごと……。それらはカナコにとってすべて他人事のように見えた。自分とは関係のない世界の出来事のようで、全然リアリティが無かった。
そしていつもカナコは不思議に思うのだが、犯罪事件のニュースというものがほとんど流れなくなっていた。本当に事件の類は起きていないのだろうか? いつも不思議なのだ。ひょっとしたら、犯罪事件はニュースで流さないようにと、誰かがストップでもかけているのだろうか?
カナコはベッドに入り、芸能ニュースのチャンネルに替えた。
そこでは、どの芸能人が熱愛発覚しただの、離婚しただのといったインパクトのあるニュースが大きく報じられていた。他には誰がどんな活動を開始しただとか、どんな新人がデビューしただとか、どのお笑い芸人が新ネタを披露しただとか……。
やはりそれら芸能ニュースも、カナコにとってどこか別世界の出来事のように感じられていた。世間一般のニュースに比べればまだ興味がわかないこともないが、自分の手の届かない存在に感じられて、本当にニュースで言っているようなことが起きているのだろうか? と不思議に感じられているのだった。
でも、いくら自分から遠い存在であっても、無限とも思えるニュースの数々はカナコをひきつけてやまなかった。深夜になってもカナコはずっと芸能ニュースを見続け、いつしか眠りに落ちていった。
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